重ねた嘘、募る思い
「行かない」
「って、知らないわよ。陽に直接言ってよ」
「知らない」
「私だって知らないわよ」
真麻の足音が遠ざかってゆく。
行かないと断りのメールだけでもしておく方がいいだろう。
本当はしたくない。関わりを持ちたくない、けどしょうがない。
『お礼は結構ですので真麻を誘ってください。明日は仕事休みですから』
真麻の勤務状況は知ってるかもしれないけど。
短いメールを送信し、そのままベッドになだれ込むように横になった時、携帯が震えた。陽さんからの返信だ。
『待ってる』
一言だけのメッセージに心臓がどくんと跳ねたような胸の疼きを感じた。
『行かない』と突っぱねるような拒絶をするよりもいいかと思ってそうメールしたのに。嘘でも『用がある』と送るべきだったのかもしれない。だけどもう嘘をつきたくなかった。
スケッチブックに書かれたメッセージを見たら罪悪感がいくつも押し寄せてきて、今更だけど四つも嘘をついてしまったことを後悔していた。
バレてしまった真実の方が多いだろうけど、時間を巻き戻せるなら最初からやり直したいくらい。
けれどこの場合はわたし自身を守るための嘘になるのではないかと今更ながら後悔した。
ひとを欺くための嘘しかつけないなんて、最悪な自分を罵りたい気持ちでいっぱいになった。