重ねた嘘、募る思い
「のん、開けて」
背にした扉を強くノックする音と振動から真麻が怒っていることがわかる。
それに声のトーンがいつもと全然違う。ドアノブが回る音と同時に寄りかかっていた扉が押される感覚がした。しつこいくらいに真麻がノブをガチャガチャと回し続ける。そしてはあっと大きなため息。
「陽がこの前のお弁当のお礼をしたいから明日九時にT-Bランドの木の下で待ってるって。メールしても返事がこないって伝言預かったんだから。私は伝えたって言うからね!」
どんどん、と荒々しく扉が叩かれる振動を背中に感じる。
真麻の怒りがダイレクトに伝わってくるようだった。
だけど開けるつもりはない。この扉が唯一の防波堤かの如く全体重をかけて押さえ込んでいた。まるで殻に籠もった自分自身を守っているようで滑稽だと思いながら。
明日の九時、あのツリーだった木の下で、陽さんがわたしを待っている。
でも、行けない。
行ってしまったら、きっともっと惹かれてしまう。
お礼なんかいらない。わたしは何もしていないもの。協力だって。
「ちょっと! 聞いてるの?」
苛立った真麻の声と共に再び背中に振動を感じた。