愛してるの代わりに
「雛、実はさ……」





俺、2学期から東京行くんだ。




夏休み中、事務所のレッスンとか通っててさ。

それで、プロの真剣さっていうかさ、色々学んだんだよね。

芸能界ってチャラチャラしたヤツばっかだと思ってたけど全然違うんだよ。

目標持ってそれに向かってみんな真剣にやってる。

俺は母さんや姉ちゃんが応募したからなんとなく受けて、合格したからなんとなくレッスンとかも受けてて。

でも、頑張ってる他の人たち見てたらこんなことじゃダメだなって。

もっと真剣にこの仕事に対して取り組まなきゃいけないんじゃないかって思ってきて。

そしたらラッキーなことに、10月からのドラマのレギュラーが決まって。

高校受験のこともあるし、このまま芸能活動続けていくのなら、東京の学校に転校して、そこから仕事をやりやすい環境の高校に行くっていうのが一番いいんじゃないかって。

親と事務所の人たちと話し合ってさ、決めたんだ。




嬉々として語る慎吾の横顔は、雛子には今までで一番眩しく、そして大人に見えた。

オーディションを受ける、そう聞いてからずっと感じていた不安。

慎吾が自分から離れていく。

自分を置いて、どんどん大人になっていく。

寂しくて、でも誇らしくて、ちょっとだけ悔しい。

そんな自分の感情を慎吾に知られないように雛子は必死で笑顔を作った。





「……そっか、寂しくなるね」

「……うん。だから雛とこうやって学校から帰るのも今日が最後」

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