愛してるの代わりに
ずいぶん口撃的だった同僚とのランチを終え、午後からの就業に備えてデスクへと戻ると、なぜだか疲労感が生まれていた。

今日はいつも以上にふたりの恋愛トークが厳しかったのだ。

もっと出会いを求めて出歩くべきだ、だの。

もし気になっている人がいるのなら積極的に動くべきだ、だの。




もちろん雛子も自分の年齢は自覚している。

両親もそろそろいい人はいないのか、と質問してくることも多くなってきた。

そして、慎吾への恋心が成就できるものではないということも、頭ではわかっている。




15歳でいきなり連続ドラマのレギュラーデビューを飾った慎吾は、瞬く間にスターへの階段を駆け上り。

今や押しも押されぬトップスターの仲間入りをしている。

ドラマや映画にも引っ張りだこ。

恋人にしたいタレントランキングも上位常連組だ。




そんな慎吾を周りの女性も放ってはおかないのだろう。

この13年で、何度か週刊誌やワイドショーで熱愛報道が上がったこともある。

真偽の程は本人に訊ねてはいないのでわからないが、全てが嘘、ということでもあるまい。




そろそろ片想いに終止符を打たないといけない時期だよねぇ。

昼休み終了のチャイムが鳴り、雛子は突っ伏していた顔を上げた。
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