愛してるの代わりに
「姉ちゃん、俺ちょっと出てくるわ」
「ほーい」
陽が落ちたといっても昼間の名残で外は少し暑さが残る。
「あれぇ、慎くん帰ってたの?」
「おう、今帰りか? おかえり」
「ただいまー」
玄関を出ると、ちょうど雛子の妹、芽衣が帰宅してきたところだったらしい。
「芽衣ちゃん、仕事ちゃんとやってる?」
「ご心配なくー。何とかやってるよ」
慎吾がこの場所を離れたとき小学生だった芽衣も、今年から社会人1年生。
「なんか芽衣ちゃんが働いてるとか信じられないよ」
「それだけ慎くんがおじさんになったってことじゃない?」
「あのなあ」
「慎くんがおじさんなら、お姉ちゃんもおばさんだけどね。ホント、一体あの人どうするんだか」
「どうするって?」
「んー、結婚とかそういうの? お姉ちゃん、何にもそういうこと言わないの。逆に周りが勝手に心配してるって感じで」
ここでもその話か。
恐らく周りに色々言われても黙って聞いているだろう雛子を思い、思わず苦笑する。