愛してるの代わりに
「あ、そうだ。慎くんなんとかしてよ」
「え、俺?」
「うん。お姉ちゃん嫁にもらってやってよ。思えばさぁ、お姉ちゃんの周りの同年代の男の人って慎くんだけなんだよねぇ」
「……そんなことねぇだろ?」
「いや、そんなことあるの。だって私、お姉ちゃんから男の人の話聞いたこと一度もないんだもん。って大スターに何言ってんのって感じだね」
思わず黙ってしまった慎吾に気付いたのか、芽衣が肩をすくめる。
「慎くんの周りはキレイな人も多いだろうし、お姉ちゃんみたいな庶民には興味ないよね。ごめん、さっきのは戯言だと思って聞き流してて」
お姉ちゃん、今日は未来ちゃんとご飯食べるって言ってたよ。
聞こうとしていた雛子の所在を告げた後、芽衣は「じゃ、またね」と崎坂家に入っていった。
姉ちゃんも芽衣ちゃんも、絶妙のタイミングで話を振ってきたなあ。
もしかして、俺たちの会話聞かれてたのか?
「いや、まさかな」
思わず頭に浮かんだ考えを自分の中で自己完結し、慎吾は目的地へ向かって歩き出した。