愛してるの代わりに
「慎吾と崎坂って仲いいよね」

「ふたり、付き合ってんの?」

いつも行く公園には先客がいた。

学年でも評判の悪ガキ3人組。

体格も大きく、乱暴的なこともあり、体の小さい雛子は彼らに対して苦手意識があったのだ。

咄嗟に慎吾の後ろに隠れる雛子。

「おふたりさーん、結婚の予定はいつですか~?」

付き合うとか、結婚とか。

意味もわかっていないまま使ってみたくなるお年頃の彼らには何を言っても通用しない。

楽しい楽しい日曜日がどんどん悲しいものになりつつある瞬間。

今まで黙って3人を見つめていた慎吾が口を開いた。




「何言ってんの。僕たち付き合ってたりとかしないよ」

「じゃあなんでいつもふたりで遊んでるんだよ」

「そうだ、そうだ!」

「どうしてか教えろよ!」

「なんでって……。雛と僕は家族みたいなものだもん。家族はみんな仲良し、そうでしょ?」




にっこり。

屈託のない笑顔を浮かべる慎吾。

「お前らだって、お母さんやお父さんと仲良しだろ?」

「……まあな」

「お姉ちゃんや妹と遊ぶだろ?」

「うん……」

「それと一緒。だから雛のこといじめたりするヤツは許さないからね」




慎吾は気付いていたのだ。

雛子が彼らにいつも、慎吾とのことをからかわれていたことを。

その度に何も言えずただ泣いていたことを。





「慎くん、ありがと……」

3人が帰った後の公園。

ブランコを漕ぎながら雛子はポツンとつぶやいた。

「僕は気にしないから。だから雛も気にしちゃダメだよ」

「うん!」




これからもずっと、僕たちは仲良しだよ。




慎吾の言葉に雛子はにっこりうなずいた。

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