愛してるの代わりに
言われたことを理解するのに約10秒。
はたと気付いて抱きしめられていた腕の中から顔を上げると、暖かい何かが唇に触れるのを感じた。
「ってことでまずはひとつめ。ファーストキスいただきました」
余裕綽々の表情が憎らしい。
憎らしいけど見惚れてしまう。
「ファ、ファーストキスじゃないもん」
思わず照れ隠しに口をとがらせる。
「じゃあ、誰だよ」
しばらく悩んでぽつり。
「多分、お父さん。乳児の頃の証拠写真が我が家に……」
「そんなの初めてのうちに入りません」
再び慎吾の香りが近づくのを感じ、反射的に目をつぶると。
さっきよりも少しだけ長く、優しく唇が触れ合った―――