愛してるの代わりに
ハジマリ
☆ハジマリ☆



雛子の休日の朝は、普段よりも少しだけ遅くスタートする。

通常より2時間程の多めの睡眠。

これが意外と1週間の疲れを取ってくれるのだ。

「ん~……」

目覚まし時計の針は、休日の起床時刻を指していた。

眠ったままの姿勢で少し伸びをし、ベッドから頭を起こす。

「夢じゃ、ないよね?」

そっと唇に触れ、昨夜の出来事を思い出す。




今でも信じられない。

昨夜、未来と食事に行き、帰り道の公園で慎吾に呼び止められ。

確実にフラれる、と思って覚悟を決めていたのに、帰ってきた言葉はその逆で。

想いが伝わればいいな、そんな淡い期待を持って今まで生きてきたけれど、まさか本当に伝わるとは思ってなくて。

まだ信じられない気持ちでいっぱいの中、キスまでされた夜。




「うわぁ、私、一生分の幸せ昨日で使い切ったかも知れない……」

思い返してみるだけで、ますますそんな気持ちが強くなる。

2度目のキスの後、「そろそろ帰るか」と右手をつかまれて。

そしてそのまま手をつないで家に帰った。

「また明日な」

そう言って左手は雛子の右手を握ったまま、右手でいつもみたいに頭をポンポンとたたかれて。

最後にもう一度、3度目のキスが落ちてきた。




ヤバイ。これはヤバイ。

何度思い返しても、一生分の幸せを使い切っている気がする。

悶々としながら、パジャマから部屋着に着替え、洗面台へ向かう。

洗顔をすませ、ドレッサーの鏡に映る自分の顔を見ていると、自然と視線が自分の唇を見てしまい、思わず頬を赤らめてしまう。

「ダメダメ、しっかりしなきゃ」



緩む顔に喝を入れ、家族が揃うリビングに向かうと、すでに朝食はすませたのであろう両親が、ソファに座ってくつろいでいた。

芽衣はまだ起床していないようだ。



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