愛してるの代わりに
「慎くん、もう少しで着くと思うって」
「じゃあ、待ってようか」
温かい笑顔の店主夫婦に案内された和室の個室で、雛子は少し緊張しながら慎吾を待つ。
「今更何に緊張してるのよ」
未来もあきれるほど、変な緊張をしてしまっているようだ。
「う~ん、何にって言われても伝えようがないというか……」
「まあ、アンタたちまともにデートもしてないもんねぇ。ただの遠距離恋愛、で片づけられるものでもないし」
なんとも言えない複雑な表情の雛子に、未来も苦笑いで返す。
しかし、その未来の顔がふわり、と微笑みに変わる。
「でも、毎日会えない分だけ今日は目いっぱい甘えなさいよ」
「ありがとう、未来ちゃん」
「……私は雛子が泣く姿が見たくないだけー。宮脇が雛子泣かすようなことがあったらすぐにぶん殴ってやるんだから!」
本当にこの親友は頼もしい。
未来への感謝の気持ちで胸がいっぱいになった頃、和室のふすまがガラリと開き、待ち人がようやく到着した。
「ごめん、遅くなった」
「ううん、大丈夫」
「ホントー。待ちくたびれた」
正反対の返事を返すふたりに慎吾は苦笑いだ。
「お詫びにここの食事代は俺持つからさ」
「当然でしょ」
当たり前のような未来の態度に「相変わらずだなあ、大西は」と笑いながら、慎吾は雛子の隣に腰を下ろす。