愛してるの代わりに
4人が帰った後、玄関に少しに静寂が訪れる。
途端、慎吾の腕に抱きしめられると、頭の上から大きなため息。
「どうしたの? 慎くん」
「ただいま、雛、ってすぐにこうしたかったのに……」
「おかえり、慎くん」
胸の前にある慎吾の腕に軽く手をのばすと、慎吾の抱きしめる力が強まった。
「でも私は、貴哉くんとすみれちゃんに会えて嬉しかったよ。今度は咲良ちゃんも入れて、慎くんの昔のお話たくさん聞きたいな」
「咲良ちゃんか……。貴哉と咲良ちゃんが組むと、ロクなことになんねぇんだよなあ」
「それ、咲良ちゃんに言っちゃおうかな」
「雛、それはやめてくれ。頼むからっ!」
慌てる慎吾の腕から抜け出し、雛子は台所へと向かう。
「ちょっと遅くなったけど、朝ご飯食べようよ」
「そうだな。……雛!」
「なあに?」
振り向くと、額に落ちる唇。
「食べ終わったら、支度して。遅くなったけど、新婚旅行行こう」
って言っても、1泊だけど。
申し訳なさそうな慎吾に、雛子は頭をふる。
「1泊で充分だよ。じゃあ、さっさとご飯食べちゃおう!」
ふたりの新婚生活は、まだ始まったばかりだ。
【2015.11.21】


