婚約者の憂鬱






「えぇい……こうしてても埒が開かん。アレク、登っちまえ」

 痺れを切らしたジェラルドは、下にいる悪友に声をかけた。

「合点承知~」

 油断すれば串刺し死体になるというのに、アレックスの返事は軽い。
 ジェラルドを足場にするすると壁を登っていく。

「ん?」

 途中で、縄が下ろされる。
 カインが戻ってきたのだろうか。

「カインも何だかんだ言っても、ちゃんと助けてくれる……うわわわッ!」

 突然、頭上でアレックスが素っ頓狂な声をあげた。

 不思議に思いつつも、ジェラルドが縄を握り直して穴から脱出すれば、

「ッ!」

 四方を剣に囲まれる。

 眼前には、黒衣の司祭がいた。
 こめかみの真横に、短剣を突きつけられている。

「仲間は、これで全員か?」

「はい、そうです」

 首領らしき男に問われ、カインが素直に頷く。

 周囲にいる盗賊は全部で二十人ほど。

 数に押されて、カインは投降したようだ。
 あっさりしすぎて責める気にもならない。

 ジェラルドは、横目でちらりと見た。



「カイン。おまえ、剣は?」

「僕は聖職者です。扱える訳ないでしょう」

 最初から期待はしていなかったが。
 何故、そこまで偉そうに威張るのか。






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