婚約者の憂鬱






「見ろよ、これ!」

「『紅灼竜の牙』か。最後に、いいお宝が手に入ったな」

 下卑た笑い声が祭壇に響き渡る。


 ジェラルドは唇を噛む。
 先代国王から賜った愛剣が、あんな盗賊どもの玩具にされるとは。

 かつてない屈辱だ。

 眼前には、二十人ばかりの男たちが酒盛りをしていた。
 この神殿跡を根城にし、レパフレスとセナンクールを行き来する商人たちから金品を強奪していたようだ。


 とはいえ。



「何で、バレたんだ」


 ジェラルドは、憮然とした面持ちで素朴な疑問を呟く。
 後ろに回された手首には縄が何重にも巻きつけられている。

「当然でしょ。あれだけ罠を作動させまくったら」

 隣に座るカインが、しれっと答えた。

 確かにあれだけいちいち罠に引っ掛かっていたら、敵の侵入と現在地を教えているようなものだ。

 恨めしげにアレックスを見れば、両手を縛られた状態で眠りこけている。
 暴れても無駄と悟ったのか、体力を温存したいからか、あるいは眠いから寝たのか。


 どこまでも自由な男である。

 アレックスの言動を、いちいち嘆いても現状は変わらない。




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