婚約者の憂鬱
(まさか、新手か?)
さっさとカイン縄をほどかせればよかったと胸中で舌打ちする。
アレックスの攪乱のおかげで状況を巻き返したのに、仲間にこられては元も子もない。
すぐに視線を這わせ、愛剣の行方を探せば。
「全員、動くな!」
祭壇に踏み込んできたのは、顔見知りの騎士団だった。
「速やかに投降しろ!」
手際よく盗賊たちを捕縛していく。
突然の出来事にジェラルドは呆気にとられた。
「大丈夫か」
最後に、ひょっこりと顔を出したのはラファールだった。
「な、何で?」
「カインから早文がきた。盗賊のねぐらを見つけたから、応援をくれと。遅かったか?」
目を丸くするジェラルドに説明しつつも、横目でちらりと司祭を見る。
「いいえ。ちょうどいい頃合いでしたよ。やはり、頼みごとはユベール卿に限ります」
黒衣についた土埃を払いながら、胡散くさい爽やかな笑みを浮かべる司祭。
それを見つめながら、ジェラルドは気がつく。
神殿の探索前に、村で書いた手紙の行方――――