追憶のエデン
玄関の扉を開けると階下には一台の漆黒に輝き、バーガンディのレザーシートが高級感を醸し出すクラシカルなオープンカーが止まっていた。



「お手をどうぞ、お姫様?」


ルキフェルのさり気ないエスコートに身を任せ、助手席に乗せられらると、ルキフェル自身は運転席へ乗り込んだ。


「てっきり専属の運転手さんか誰かが運転すると思ってました。」


「何で?デートは2人でするものでしょ?」


そう言ってふわりと笑うとエンジンを掛け車は走り出した。



大きなお屋敷程度の認識しかなかった家は、大きなお城だと知りもっと外にも出てみればよかったと思う程素敵で、遠ざかっていくお城を眺め続けた。
そしてお城の門を抜け、森の中へ入って少し走ると、水面がキラキラと輝く湖が右手に拡がり、現代っ子で都会に住むあたしにとってこの光景には心底感動することになる。湖と光と森と青空、そのそれぞれの持つ色のコントラストがこんなにも調和し、心を癒すだなんて改めて知った。


「ここからは結界の外だから」


しかしそんな言葉が聞こえると、急に澄み渡る青空と降り注ぐ太陽の光が届かなくなり、辺りは薄らと夕闇が拡がっていた。


「えっ!?何で?」


さっきまで見ていた景色の時間が嘘の様に早まった様で吃驚し、きょろきょろと辺りを見回してしまう。


「ここは魔界だからね。謂わば夜の国と言ってもいい。でも時間はさっきまで僕達がいた城の中で流れてる時間と一緒だよ?ただあの空間は特別に僕が創っただけ。」


さらりと爆弾発言を落としていくけど信じるしかない。
何てったってこの信じ難い光景と現象をまざまざと見せ付けられているのだから。
また体験した事のない事程、人間とは好奇心という欲が出てくる。そして好奇心に駆られるまま、この非現実な世界を知りたいと思ってしまった。


「魔界って、あたしがいた世界とは別の世界って事ですよね?
魔界ってどんな場所なんですか?」


「興味、持ってくれたんだ?
ドライブがてら教えてあげるよ。
イヴの住む世界にもなるわけだし…ね。」
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