追憶のエデン
2曲、3曲と続けて行くうちにこの生まれる音達に言葉を乗せた。
祈る様に、暗闇に堕ちてしまわないように丁寧に言葉を乗せて心を込めて歌を歌う。



そしてひとしきり歌うと、拍手が聞こえた。


「なんて言っていいのか分んないけど、俺、すっごく感動しちゃった!」


目を潤ませ鼻をすすりながら拍手するグレンがドアの前に立っていた。


グスグスと泣きそうなグレンに慌てて駆け寄れば、腕をひかれそのまま抱きしめられた。


「魔界で神様に救いを求めるのは気に入らないけど、未羽の声がすっごく胸をぎゅーってするんだ。
どぉしてくれるの?未羽のバカやろー!」


「何それ?」


クスクスと笑えばグレンに思い切り両頬を抓られてしまった。「痛いから離してー!」と言えば彼は笑った罰だと言う。本当にグレンと一緒にいると空気が一変して、直ぐにグレンのペースにされてしまう。でもそんなやり取りが大好きだった。


友達としてだけど、本当にグレンと過ごす時間は大好きだったんだよ――。




日も落ち、自室に戻るとふわりと風が通り抜けた。
バルコニーへと繋がる窓が空いている事に不思議に思いそっと近づいてみれば、以前見た時と同じ様にルキフェルが佇んでいた。儚げで今にも消えてしまいそうだった。


「――イヴ?」


あたしに気付き振り返ったルキフェルと目が合えば、彼は優しい笑顔をあたしに向け、腕の中に閉じ込めた。



「ねぇ、誰を殺せばいいと思う?……それとも、みーんな殺しちゃおっか?
ねぇ、どう思う?イヴが選んでいいよ。」


甘く優しい声音で尋ねると、あたしの髪を一房掴みそのまま口づける。


「ほら、早く言って?」


そして深く噛み付く様な激しいキスが落とされ、執拗に舌を絡め取られる。


「ふぅ…ん…やっだ…んっ…誰もぉ…殺っ・・さなぃ…でっーーんんつ」


「はっ…イヴって、ほんと残酷。んじゃぁ今日は殺さないであげる。でも今後はイヴ次第…かな?…はぁ‥ぅんんっ…」


切なく、感情をぶつける様な、頭の奥で痺れさしていく深いキス。
この言葉とこのキスが何を指しているのかは分からない。
< 43 / 114 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop