追憶のエデン
グレンと同じ姿になったアリシアさんの姿に息を飲む。


あたしの知ってるアリシアさんともグレンとも違う纏う雰囲気に恐怖が込み上げる。


そしてその恐怖心を煽る様に冷淡で妖艶な微笑みを向けられれば、身体は小刻みに震え、奥歯がガチガチとなり始めた。


「ふふっ。恐怖はこれからですわよ？」


「――――ツッ！！！」


アリシアさんの人差し指が軽く宙に弧を描けば、急にあたしの身体は持ち上がり、そのまま思い切り背を壁に叩きつけられ、そのまま壁に張り付けにされてしまい逃げる事も叶わなくなった。
また受けた衝撃によって呼吸が一瞬止り、塞がれた気道を戻そうとすればする程息苦しく、そして背中が鈍く痛む。でも身体を捩り痛みを逃がそうにも、動けば身体は締め付けられ、更に痛みは増すばかりだった。


その時、何かがヒュンと宙を切る様な音と撓る音が聞こえ、はっとして顔を上げれば手に長い革製の紐が突いた鞭を持ったアリシアさんが立って降り、容赦なくあたしの身体に声を上げ、笑いながら何度も何度も打ち込んでくる。



痛い――。
傷が熱を持ったみたいに熱い――。
何でこんな仕打ちを受けなきゃいけないのか分からない。
あたしが、何をしたっていうの？



鞭で打たれるだけじゃ、死ぬ事もなければ、気絶する程の痛みすら与えられない。
感覚と意識を残されたまま、この熱く皮膚を引き裂かれる様な痛みに耐え続けなければいけない。
打たれる度に何度、苦痛の声を上げたかすらも分からない。
涙が幾筋も頬を伝う。


「もぅ…やめ、て…くださ…ぃ……。」


精一杯の言葉を出すけど、喉から吐いた声は掠れて、今にも消えてしまいそうな声だった。
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