追憶のエデン
「ねぇ、未羽さん?
貴女に分かるかしら?


愛しくてたまらないのに、この想いは届かない――。
求められるのは、いつだって貴女の姿――。


それでも気まぐれに、あの方に抱かれた日は、幸福で打ち震える心は喜びで涙を流す。
独りよがりな自分を思い知らされ、寂しさと悲しみが募った日は、快楽に身を任せ、悲鳴にも似た喘ぎ声をあげて鳴く――。あの方の姿を頭の中で思い描きながら、持て余した身体の熱を、他の男達に開かれ、幸せと空しさをぐちゃぐちゃ掻き回され、昇華していく――。


どんな気持ちか、貴女にお分かりかしら?




――グレン?」



「解ってるよ、姉様。
俺は姉様の為なら何だってするよ。


愛しい姉様、俺は貴女の従順なイヌーー。」


ドアを背に佇んでいたグレンはそっとアリシアさんに近づき、跪くとアリシアさんの手を取り、愛しげに手の甲へとキスを落とす。一種の神聖な儀式の様なそれが終わると、ゆっくりと立ち上がりあたしの方へと身体を向け、ゆっくりとこちらへと歩き始め、一気に恐怖が込み上げる。


「ぃ…ゃ……来なぃ、で…」


距離を取る様に後ずさるけど、すぐに背後に壁の冷たい感覚がする。


――逃げられない!


身体は更にガタガタと震え、瞬きも忘れ、目を見開いたまま近づいてくるグレンを見上げる。


「何で、そんな怯えた顔をしてるのぉ?
俺達、友達でしょ?




――なーんてね。
友達だなんて思った事なんて一度もねぇよ。
騙されちゃってさぁ。
ほーんと、未羽って頭悪いよね。アハハッ!」



――ビリっ!ビリリっ!!



無残にも大きく破られ剥ぎ取られた服の胸元。
一体何が起こっているの?


信じられないという目でグレンを見れば、ピジョンブラッドの瞳をギラギラとさせ、獲物を痛めつけて喜ぶ獣の様な顔をしたグレンがペロリと舌なめずりをし、あたしの耳元に口を寄せてきた。



「優しくなんてもちろんしないよ?
これからたーっぷり……


痛く弄んであげる。」



「いやぁぁあああぁあぁっ!」
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