好きになんか、なってやらない
すでに人が少なくなったフロア。
シンとしているので、なるべく音を立てずにやり過ごしたい。
だけど、コピー機を動かせば、嫌でもウィーンといううるさい機械音が鳴ってしまう。
振り返ることなく、5枚ずつ印刷をして、再び会議室へと戻った。
あとは、5人分閉じれば……。
顔を上げると、23時を過ぎていた。
いい加減、焦ってくる。
ささっと一枚一枚折り込んでいると……
「なーに一人でやってんの?」
急に響き渡った一人の声。
一瞬にして、その声の主が分かってしまい、振り返るのが嫌だと思いながらも、ゆっくりと振り返った。
そこには、予想通り、岬さんが立っていて……
「……お疲れ様です。
課長に頼まれたファイリングをしているだけですよ」
「もうすぐ終電じゃねぇの?」
「分かってます。もう終わりますから」
無駄話をしないよう、すぐに目線を書類へと戻した。