好きになんか、なってやらない
 
「手伝ってあげようか」
「……大丈夫です」
「好意は素直に受け取るものだよ」
「……」


断っているのに、岬さんは勝手に会議室へ入って来て、まとめた書類を持ち上げた。


「これをホッチキスで止めればいいの?」
「あ、はい……」
「結構分厚くね?体重かけないと閉じなそー」


そう言いながら、業務用のホッチキスの間に書類を挟むと、
ガツンと大きな音を立てて、書類を留めた。


「ほら。多分、玲奈の力じゃ無理だろ」
「そんなことないですよ」
「じゃあ、やってみ?」
「……はい」


自分じゃ出来ない、という言葉にカチンときて、書類とホッチキスを受け取って間に挟んだ。


グッ……

「あ、れ……」
「ほら」
「あっ……」

ガツンっ!


手の上から、岬さんの手を重ねられ、グッと体重をかけられた。

その反動で、沈まなかったホチキスが、書類の中へと埋め込まれていく。


「だから言ったじゃん」
「……」


ニヤリと微笑む、意地悪な顔。
カチンときたけど、事実なので何も言い返せなかった。
 
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