好きになんか、なってやらない
 
【え?そこって、会社に?】
【そう】


すぐに返ってきたライン。
間髪を入れずに、返信すると……



【いないよ】



愕然とする答えが、真央から返ってきただけだった。


凌太が私へとラインを送っているのは、1時間以上前。
だからもう会社に着いていて、当たり前。

なぜだか物凄く胸騒ぎがして、心臓がバクバクといっているのが分かった。


【そう。ならいいんだ】


真央には余計なことを言いたくなくて、それだけ言うとラインの画面を閉じた。

変に思われたかもしれない。
だけど今、下手な言い訳とか嘘を言うほど心に余裕がない。


信じていた人に裏切られた気分になって
目の前がぐわんぐわんと揺れている。


大丈夫。
どこか本屋とかに寄ってるだけかも……。

それか、意外と早く終わって、もう帰り道とか……。


自分を励ますようにいろんな可能性で言い聞かせて、冷静になれるよう深呼吸した。

だけど足が勝手に一つの場所へと向かって行く。
ぴたりと止まって、見下ろしたその場所には……



「……………ない…」



昨日あったはずの
美空さんのピアスがなかった。
 
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