いつだって、私は。

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「__一花、さん?」









冬夜先輩のことを思い出してぼーっとしていた私に、赤葦さんが不思議そうに声をかけて私の顔をのぞき込む。
ふわっと揺れる髪の毛が水滴を飛ばした。
…私の前に自分の髪の毛乾かした方が良かったんじゃ?
そんなことを思うけれど、きっとそれは赤葦さんの優しさだ。









「あ、なんでもないです。


ちょっと昔のこと思い出してただけで、」








「辛そうな顔してた」









私の声を遮る、学年を明かしてから少しだけ砕けた赤葦さんの口調。
敬語っていう皮を取りきれない、少しだけ敬語の名残の残る二人称。
それに不意にドキッとする私がいた。


冬夜先輩にもこうやって、ドキッてした。
名前呼ばれる度にドキドキしてて。頭なでられる度に怒りながら真っ赤になって。


あぁもう、また冬夜先輩のこと思い出しちゃった。










「赤葦さんといると、不思議なんです。


昔好きだった人を思い出す、っていうか。
伝えられずに終わっちゃったんで辛い思い出ですけど」









苦笑混じりにそう言うと赤葦さんは少しばかり驚いた顔をした。









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赤葦さんといると冬夜先輩を思い出すのは、似てるから。
そうだって思い込んだ私がいた。
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