Happy New Life!【完】
「……そっか」

 そう一言つぶやいたあと、亨は何も言わない。

 いくらかの沈黙が続いた後で「ごめん」と呟いた。

 それってどういう意味の「ごめん」なの?

 その一言に不安になる

 何かを考えている様子の亨の次の言葉を待った。

「一方的に結婚なんていってごめん。俺だけの都合で決められることじゃないよな」

 どこか寂しそうな笑顔に胸が締め付けられた。

「ごめん……」

 今度は私が謝る番だ。

「私やっと自分が認められた気がして。だから今投げ出すことなんてできないよ。私の我が儘だってわかってるけど……」

「違う……だったらついて来てほしいって言うのは俺の我が儘だ。沙穂はどうしたいんだ?」

 亨について行きたい……けど、目の前にある仕事にも挑戦したい。

「今どちらかを取らないといけないなら、私は仕事したい。頑張ってみたい」

 私の言葉に亨はにっこりと笑った。

 でもどこか寂しさをはらんだその笑顔が胸に突き刺さる。

「沙穂の人生だから、沙穂が決めたらいい」

「うん。だけど……私たち大丈夫だよね」

 今仕事を取ると決めたばかりなのに、すでに亨との関係がどうなるのか心配になる。

「努力しよう。これまでよりもずっと一緒にいるために努力しよう」

 亨はそう言うと肩を抱き寄せて、私の頭に自分の頭をコツンと合わせた。

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