Happy New Life!【完】
亨――大平(おおひら)亨とは私が大学卒業と同時につきあいはじめた彼氏だ。
いや、正確には彼氏だった……が正しいのだろう。
サークルでふたつ上の先輩だった亨に私はひそかに思いを寄せていたのだけれど、告白する勇気もなくそのまま卒業してしまった。
再会は就職活動に行き詰っていたとき。
私はちょうど不採用の『ご縁がなかったということで』というお決まりのセリフを携帯で聞いていたときだった。
通話終了ボタンを押すと同時に目に涙が浮かぶ。
こんなことくらいで泣くなんて。そう思うけれどこう何社も断られていたら自分のすべてが否定されているようで心がすり減っていく。
学生の時ははっきりとわかる点数で合否が判定されていた。社会人になるとそうはいかないのだ。客観的な数字だけではなく人間性をみられてしまう。
そしてその結果がこの惨敗続きだとしたら私の価値はないに等しいのではないか……。
「沖野? 沖野だろ?」
その時背後から声をかけてきたのが亨だった。
そのときの亨の顔はきっと一生忘れられないだろう。
涙をためた私を見て、驚いて目を見開いた。そしてすぐにあたふたと焦り始めた亨をみて私は急におかしくなり笑いだしてしまった。
いや、正確には彼氏だった……が正しいのだろう。
サークルでふたつ上の先輩だった亨に私はひそかに思いを寄せていたのだけれど、告白する勇気もなくそのまま卒業してしまった。
再会は就職活動に行き詰っていたとき。
私はちょうど不採用の『ご縁がなかったということで』というお決まりのセリフを携帯で聞いていたときだった。
通話終了ボタンを押すと同時に目に涙が浮かぶ。
こんなことくらいで泣くなんて。そう思うけれどこう何社も断られていたら自分のすべてが否定されているようで心がすり減っていく。
学生の時ははっきりとわかる点数で合否が判定されていた。社会人になるとそうはいかないのだ。客観的な数字だけではなく人間性をみられてしまう。
そしてその結果がこの惨敗続きだとしたら私の価値はないに等しいのではないか……。
「沖野? 沖野だろ?」
その時背後から声をかけてきたのが亨だった。
そのときの亨の顔はきっと一生忘れられないだろう。
涙をためた私を見て、驚いて目を見開いた。そしてすぐにあたふたと焦り始めた亨をみて私は急におかしくなり笑いだしてしまった。