孤独女と王子様
"では、行きましょう"と、目的地へ行く電車が止まるホームへ向かう。

それにしても…今日の剛さんの格好。

濃い緑のウインドブレーカーに、黒のストレッチ素材のパンツ。
きちんとトレイルウォーキングシューズも履いていて、しかも新品でもなさそう。

まるでハイキングや登山に行き慣れているようにも見えた。

『僕、何かおかしいですか?』
「い、いえ…ただ、格好が完璧なので、ハイキングや登山はされる方なのかな、と思っていまして」
『学生時代は、とにかく何でもやりましたからね。これでも高校の時は吹奏楽部でトランペットを吹いていたんですよ』

え?吹奏楽部?
室内系の部活動だったのは、かなり意外。

「剛さんって、何でも出来るんですね。苦手なものがなさそうに見えます」

目的地行きの電車が来た。
平日で朝早い今は、ほとんどお客さんがいない。

ガラガラの車内は、座る場所に迷う。
私は剛さんに合わせてロングシートの座席に並んで座った。
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