孤独女と王子様

ショートボブで黒髪のその女性は、僕のことを穏やかに見た。

女性店員と目が合った時、僕はそこから動けなくなった。

僕の目を奪う、目の前の美しき女性。
書店員特有の緑色のエプロンをして、おしゃれな格好をしているわけでもないし、決して濃いメイクをしているわけでもない。

当たり前か。
彼女は仕事中だ。
それでも、僕はその美しい花に見とれてしまった。

彼女は1冊の本を薦めてくれた。
最早、内容はどうでもいい。

彼女が推薦する本なら、間違いないと根拠もなく思った。

次、会った時、いい報告ができるように頑張ろう。
僕はそう思った。

彼女の名札には"かんべ"と記されていた。

かんべさんか。

また、会いたい。
強くそう思った。