孤独女と王子様
私も剛さん同様、かなりお腹が空いていた。
でも、剛さんにずっとおんぶしてもらったり、ずっと電車で寝ていた手前、なかなかそれを言い出しづらかったけど、

"グー"

静かな店内で私のお腹の音が響いてしまった。

「ご、ごめんなさい」

"アハハハ"と笑った剛さん。

『笑ってごめん。でもお腹空いたなら空いたって、はっきり言って欲しかったなぁ』

私は恥ずかしくて言葉を返せなかった。

チキンカレーはとても美味しかった。
私はマスターに聞く。

「あの、毎日、何かフードメニューを用意しているんですか?ここはバーですけど。あってもドライフルーツとかチョコとかチーズとか、そのくらいですよね、普通は」
『毎日用意しているよ。俺が気に入ったお客さんにだけ提供しているんだ。由依ちゃん、剛がいなくても、いつでもおいでよ。仕事帰りにでもさ。ここは日曜と月曜が定休日。それ以外は夕方5時から』
「ありがとうございます」

でも、こんなに美味しいものを毎日食べたら、太っちゃうなぁ。
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