孤独女と王子様
僕はもう、読んだ。
新刊で、まだ書店に並んでから1週間も経たないこのタイミングなのに。

なぜなら、本人に無理矢理"読め"と言われたから。
読んだと言っても、まだ製本される前の校正段階の時だけど。

戸惑った僕の様子を見ていた由依ちゃん。

『あの、何かこの本でお気に触りましたか？もし私が読んでいい本なら、剛さんにお勧めしようかと思っていたんです。CSの観点における勉強の一環にもなると思ったので。それに、私、三枝さんのファンでもありますし』
「・・・いや、大丈夫だよ。僕も人の心の読み取り方、学ばなければならないし。ファン・・・なんだね」

どうしようかな。
由依ちゃんに話すべきだろうか。

これから親友になろうとしている彼女には、話してもいいような気がした。
僕の全てを知ってもらいたい。

ただでさえ"成瀬川家"として特別な目で見られているハンデがある。
隠し事をしていたのでは、由依ちゃんから信用される人間にはなれない。
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