シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~

海デート

 車で走ること、およそ1時間。
 私たちは、目指す海辺へと到着した。
 確かに、翔吾君が言ってたとおり、眺めが素晴らしい。
 別荘近くの海に比べても断然。
 砂浜近くの浅瀬は、透き通るようなエメラルドグリーンだ。
 その先の青色も、やや薄く感じる。
 そしてその上には、さらに薄い青空が広がっていた。
 椰子っぽい木が、そこかしこに散在していて、「まさに、南国」って感じ。
 沖合いに目を凝らすと、島の影も見える。
 あの島までは、幾分距離がありそうだけど……泳ぎに自信のある私は、到達できそうに思えた。
 それから、周りをさらにゆっくりと見渡してみる。
 人の姿はまばらに見受けられるけど、さほど混みあっているようには感じなかった。
 うん、最高のロケーションかも!
「それじゃ、泳ごうぜ!」
 元気いっぱいに言うと、颯爽と服を脱ぎ出す翔吾君。
 私も負けじと脱いで、水着姿になった。
 翔吾君の身体は、予想通り、細マッチョって感じだ。
 すごく、かっこいい!
 体育会系と言ってただけあるなぁと思った。
 水着は、迷彩柄のサーフパンツで、よく似合っている。
「その水着、よく似合っているね」
 私が言うと、得意げに笑う翔吾君。
「雫のその水色ビキニ、やっぱ最高だな! それにして、よかったよ」
「あ、ありがとう」
 しげしげと見つめる視線に、思わず恥ずかしくなる。
 でも、嬉しい。
 ずっと、私だけ見ていてほしい……そう思った。
「ほら、準備運動してから、水に入るぞ」
 早速、準備運動に取り掛かる私たち。
 終えてから、波打ち際までダッシュすると、私たちはゆっくり水の中へ足を踏み入れた。
「気持ちいい!」
 思わず叫ぶ私。
「ほんとだな。そして、この水の色、見てみろよ。透き通ってるぞ」
 見てみると、翔吾君の言うとおりだ。
 綺麗で、底まではっきり確認できるほどの透明度。
 私はなんだか嬉しくなり、何度も何度も水の中に手を突き入れた。
「じゃ、ちょっと泳ぐか」
 そう言って、バタフライを始める翔吾君。
 さすが!
 その豪快な泳ぎっぷりに、私は思わず見とれていた。
「ん? 雫は泳ぐの苦手か?」
「そんなことないよ」
 そう言って、私もバタフライを始める。
「お、なかなかやるな! 遠泳とかって、できる?」
「3キロまでならしたことあるよ」
「やるじゃん!」
 翔吾君は、優しく私の髪を撫でてくれ、そして言葉を続けた。
「あそこに島が見えるだろ。あそこまで、大体1.5キロだ。どうだ? 遠泳してみるか?」
「する!」
 私は即答した。
「よしきた。じゃあ、雫が先に行け。俺はすぐ後ろをついていく。こうすることで、もし万が一、お前の足がつっても、助けてやれるからな」
「ありがとう……」
 心配してくれてるんだ。
 でも、その割には、遠泳を勧めているけど。
 あの島に何かあるのかな。
 私としても、あの島に興味を持ち始めていたので、是非行きたい気持ちになってきていた。
「じゃあ、行くね」
 そう言って、私は泳ぎ始めた。
「おう」
 背後から、翔吾君の声と、水音が聞こえてきていた。
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