シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
「ほんとにごめんね」
「あ、罰を与えないと」
 そう言って、キスするショウ君。
「うう……。確かに、謝っちゃったけど、これは仕方ないでしょ」
「ははは。細かいことは気にするな」
 愉快そうにショウ君は笑う。
「ただ、これ以上この状態が続くと、俺の理性が持たないから、次のその下着で今日はラストにしようぜ。正直、これ以上びしょびしょになられて、その都度、拭きつづけていては、俺としても自分を抑えきれる自信はないからな」
 ストレートな表現に、さらに羞恥心を刺激される私。
 私としては、もしショウ君が抑えきれなくなっても……特に問題はないけど。
 でも、そんなことを言えるはずがなかった。
「う、うん……。じゃあ、着けるね」
 そう言って、そそくさと淡いグリーンの下着を着ける。
 エメラルドグリーンのような色合いで、浅瀬のあの色を思い出させた。
 そして、これにもレースが施されている。
 ショウ君、レースのが好きみたいだし、今度自分で選ぶときの参考にしないと。
「おお~! これもいいじゃん! 雫には淡い色合いがぴったりだ」
 ショウ君は飛び上がって喜んでくれている。
 私も飛び上がるほど嬉しい。
「じゃ、じゃあ……服、着るね」
「おう、そうだな。全てにケリをつけたら……そのときはたっぷり楽しめばいいから。今日のところは、我慢だな」
「うん……」
 少し切ないけど、私は服を着た。
「でも……。ほんとに、もういつでも……。好きにしてくれていいからね、私のこと」
 思い切って、伝えてみた。
 恥ずかしさはもちろんあるけど、どうしても伝えたくて。
 これだけ、ショウ君のことを想ってるってことを。
「だぁ~! そういうこと言うの、反則! 俺がどれだけ自分を抑えてるか、分かってないのかよ」
「ごめん……薄々は分かってるよ。でも、どうしても伝えておきたくて」
「そっか、ありがとな」
 素直にそう言ってくれるショウ君。
「ううん、こちらこそありがとうね。私、ショウ君が初恋だったんだけど、ショウ君以外の人には恋したことすらないよ。これまで、たった二人だけお付き合いした男性がいるんだけど、その人たちとはキスもしてないから」
「え?!」
 ショウ君はなぜか、驚いているようだ。
「雫……まさか、俺のことをずっと……?」
 いつも声が大きめのショウ君が、小声でぼそぼそ言う。
「うん、あの頃からずっと、ショウ君だけを想ってきたよ。どうしても忘れられなくて」
「幼稚園の頃から?」
「うん、その頃から、ずっと。再会できる見込みなんて、全くなかったけどね。でも、『もしかしたら、いつか奇跡が起こって逢えるかも』とか夢見ちゃってて。だから、こうして再会できたこと、本当に嬉しいんだよ。もっとも、翔吾君がショウ君だと分かる前から、翔吾君のこと好きになっちゃったわけだけどね」
 私はちょっと苦笑してしまう。
 ショウ君は黙って私の話を聞いてくれていた。
「私としては、心の中でショウ君にサヨナラをして、翔吾君とお付き合いを始めたつもりなの。だけど、翔吾君がショウ君だったでしょ。もう、嬉しくて嬉しくて……」
 その瞬間―――。
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