シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~

洞窟の宝

 島が見える海岸に到着した私たち。
 そこで、私はハッとした。
 そうだ、水着を持ってきてない!
 あの島まで、泳いで渡るには、水着が要るのに。
「水着、持ってきてない! どうしよう」
「そっちの店で売ってるから、問題ない。バスタオルとかゴーグルまで売ってるぞ」
「え? でも……また、買わせることになっちゃうじゃん」
「いいに決まってるだろ。俺が買いたいから。俺はどうしても、今日あそこに行きたいからな。これはもう決定事項」
 こう言い切られると、もう何も言えない。
 でも、すっかりショウ君がいつものペースに戻って、安心した。
 ショウ君はこうでないと。
「ボーっとしてないで、来いよ。さすがに、水着を俺が勝手に選んでくるわけにはいかないからな」
 そう言って、お店のほうへ歩き始めるショウ君を、私は追った。

 お店で水着やバスタオルを買ったあと、私たちは浜辺へと引き返す。
 今回買ってもらった水着は、オレンジのビキニだ。
 ショウ君はビキニが好きみたい。
 そして、ショウ君の好きなのを着けてたい私は、二つ返事でオッケーした。
 ちなみに買ってもらったバスタオルは、ウサギのキャラクターが描かれたものだ。
 ウサギというと、あの夏祭りでもらったぬいぐるみを思い出す。
 あまり似てないけど。
 人影まばらな浜辺で、早速着替えに取り掛かる私たち。
 バスタオルを巻いて着替えているので問題ないのに、ショウ君は「念のため」と言って、私の周りを自分のバスタオルで隠してくれた。
「俺以外の男に見られると、災難だからな」
「うん、それは確かに嫌だ……」
「だろ? さぁ、ゆっくり着替えろよ。焦らなくていいから」
 なぜか、ショウ君がいつもより優しい気がする。
 こういうとき、「さっさとしろよ」みたいなこと、言いそうなものなのに。
 着替え終えると、ショウ君も手早く着替え、二人で海に入る。
「じゃあ、島まで遠泳開始だな。今回も念のため、俺が後からついていく。お前のペースでいいからな。今回は、潮の満ち引きの具合で、ちょっとだけ遠そうだけど、大丈夫か?」
「泳ぎは大得意だし、任せて!」
「よし、いい返事だ! さて、いっちょ行くか!」
「はーい!」
 そして、私たちは小さな島を目指して、泳ぎを開始した。
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