ワードとエクセル、それから女子力
 「で?早苗ちゃんはいったい何が気に入らないの?」
 銀座の裏通りにある小ぢんまりしたダイニングバーのカウンターで、優里はゆったりと小首をかしげる。
 「別に気に入らないとかそういう事じゃないんだけど、さぁ…」
 もうほとんど氷しか残っていない梅酒のグラスを揺らしながら、早苗は小さな声で反論する。
 優里の右手にはめられた指輪が店の照明を浴びてきらりと輝き、早苗はまぶしさに目を細めた。
 この間彼氏にもらったってフェイスブックに載せてたやつかな。左腕に巻かれた華奢な時計は、確か去年のクリスマスプレゼント。これもフェイスブックに書いてた。確か、なんとかっていうブランドモノ。

 「じゃあ何なの?早苗ちゃんってお酒入ると愚痴ばっかりだよね。せっかく3か月ぶりに会ったんだから、楽しい話も聞かせてよ。新しい職場はどうなの?」
 丁寧に巻かれたロングヘアをふわりと揺らして微笑む優里。同性の自分でもうっとりする程の美しさだ。ああ、こんな顔に生まれてたら人生イージーモードよね。
 店内の男性陣の視線が優里に集まっている事を早苗は敏感に感じ取る。
 いつだってそうなのだ。六本木のクラブにいようが、新宿の居酒屋にいようが、代官山のカフェにいようが、丸の内のオフィスにいようが、優里はどこにいたって男性の目を惹きつけてやまない。
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