今宵も、月と踊る

(男の人って……こんなに色っぽいんだ……)

格式ばった狩衣や衣冠ではなく、そのままシャワーでも浴びられそうなだらしのない浴衣姿のせいで生来の艶が増している。

色気に当てられ腰が砕けそうになり板戸に寄りかかると、僅かにカタンと音が鳴ってしまった。

「……誰かいるのか?」

志信くんは即座に動きを止めると、盗み見を働いた人物が名乗り出るのを待った。

邪魔をするつもりはなかったのに、こうなっては仕方ない。

「ごめんなさい。練習中だったんだよね?」

観念して隠れていた板戸から這い出すと、志信くんは戸惑いを隠せずに呻いた。

「小夜……?本物か?」

「いちおう……」

ほら足も生えてるよと、冗談をかます余裕すら与えられず抱き寄せられる。

「もう……戻ってこないかと思った」

耳元で感じる安堵のため息の大きさに、自分の下した結論が間違っていないのだと自信が持てた。

甘えるように小さく身を寄せて、志信くんの心臓の音に耳を澄ませる。

……今は何も考えられないくらい思い切り抱きしめて欲しかった。

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