今宵も、月と踊る
志信くんは私という存在を確かめるように、次々とキスの雨を降らしていく。
最初は額、頬、鼻の頭、手の甲、そして最後は唇に触れられると待ちかねていたかのように喜びで身体が震えた。
……もっとと強請るこの気持ちを彼に気づかれませんように。
「どうして戻ってきたんだ?」
ある種の儀式のような口づけを終え、額同士をくっつけたまま尋ねられると、夢のような抱擁から一気に現実に引き戻された。
「ここから逃げ出す最後のチャンスだったんだぞ」
彼は警告している。逃げ出すような隙は二度と与えないと暗に示している。
「志信くんは私に出ていって欲しいの?」
「そんなわけないだろう」
志信くんは拗ねたようにプイっと顔を横に向けた。
「ただ俺が……。ガキみたいな癇癪を起こしたから……見放されても仕方ないのかなと思って」
不安そうに揺れる瞳に本心が見え隠れしていた。尊大で、自信たっぷりで、策略家の志信くんの年下らしい一面が微笑ましく思える。