今宵も、月と踊る

「ちょっと待って!!もう一回教えて!!」

志信くんの動きについて行けなくなって、もう一度と教えを請う。

志信くんが教えてくれる巫女舞は動きこそゆっくりで優美に見えるが、中腰や膝立ちといった地味に筋力を必要とされる姿勢が盛り込まれていた。

見様見真似で舞おうとしても、一朝一夕でできるものではなかった。

体力には自信がある方だったが、情けないほどに身体がふらついている。

「大丈夫か?」

悪戦苦闘している私を見かねて、志信くんが手を貸してくれる。

「ありがと」

彼が呼吸ひとつ乱していないのは日頃の鍛錬の賜物だろう。本来ならば必要のない巫女舞まで完璧にマスターしていることには驚きを隠せなかった。

「足の運び方はこうだ」

一向に上達しない様子を見かねてか、志信くんが背後に立って私の手足を誘導する。

これぞまさしく手とり足とり。

まるで操り人形のように、されるがままになって舞い踊る。

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