今宵も、月と踊る
「どうして誕生日のことを言わなかった?」
ものは試しにと思って尋ねてみると、小夜はうっと呻いて俺の顔を見上げた。
「誰から聞いたの?」
「三好屋の若女将」
余計なことをと若女将への恨み言を述べると、観念して黙っていた理由を白状する。
「29歳になったことを知られたくなかったのよ……」
まさか……それだけ?
「歳なんて誰でも平等に取るものだろう?」
28歳だろうか29歳だろうがさしたる違いはない。
俺だって次の誕生日を迎えれば21歳になる。21歳になったからといって急に何かが変わるわけでもない。
それとも28歳という年齢に対する拘りでもあるのか?
小夜は人差し指を突き出して覚えの悪い生徒に言い聞かせる教師のように辛抱強く言って聞かせる。
「いい?20歳の志信くんにとっての1歳と、私にとっての1歳は重みが違うのよ」
目を吊り上げてじっくりと説教をされたら、たとえ理解できなくとも納得せざるをえない。