今宵も、月と踊る
「でも……。そういうもの……よね」
小夜は自分でも思う所があったのかクスリと思い出したように笑うと、雑誌を元通り封筒にしまった。
もしも怪我をしなかったら、雑誌に載っているのは自分だったかもしれない。
将来を嘱望されライバルにも恵まれる理想的な環境にいながら、皆の期待を裏切ってしまった当時の小夜を思うといたたまれなくなる。
「また走ろうとは思わないのか?」
「まさか」
とんでもないとキッパリと言い切る口調には潔さしか感じられなかった。嘘をついているように思えないが、封筒をぎゅっと胸に抱く姿はどこか無理をしているように見えた。
「それでも、こうして誰かに思い出してもらえるのは嬉しいことね。久し振りに連絡してみようかな……」
旧友との再会が小夜にもたらすものとは何だろうか。
「この話は他の人には内緒にしてね」
……そう言って唇に人差し指を当てた小夜の表情からは読み取ることが出来なかった。