今宵も、月と踊る
「ライバルとはそういうものだろう?」
俺に言わせてみれば不思議でもなんでもない。
ライバルとは嫉妬して相手を蹴落とすことよりも、才能に憧れと尊敬の念を抱き、肩を並べて一緒に歩むことを望む、戦友とも言うべき存在だ。
小夜のことを認めていたからこそ引き留めたんだ。
他人の才能を素直に評価できる人間性がなければ、己の弱点を認める強さだって生まれない。国際大会に出場するほどのアスリートならば持っていて当然の資質と言える。
「志信くんがそんなことを言うなんて意外だわ……。」
ライバルのなんたるかを指摘されたことによほど驚いたのか、小夜は目を見開いて俺の顔をマジマジと見つめてきた。
(悪いかよ……)
俺は小夜の視線から逃れようと腕で顔を隠した。
こんなに気恥ずかしい思いをするくらいなら言わない方がマシだった。