今宵も、月と踊る
どさっと大きな音がしたのは、その刹那だった。
「っ……」
石段の冷たい感触を覚悟していたのに、身体に触れているのは正反対の温かさだった。
(生きてる……?)
心臓がバクバクと大きな音を立てていた。間違いなく生きている。
「大丈夫か?」
予想もしない低い声が耳元で聞こえて、バッと顔を上げる。
……私は落下の衝撃から守ってくれた名も知らぬ男性にしがみついていたのだ。
「ごめんなさい!!」
ようやく事態を把握して、慌てて男性にのしかかっていた身体を起こして移動する。
石畳に座ったまま男性は私の頬に手を添えて言った。
「怪我はないか?」
「あ、あなたの方こそ!!」
男性に守られた私の身に傷など一つもなかった。着物が破れたりした形跡もない。こけた拍子に草履が片方脱げてしまったくらいだ。