今宵も、月と踊る
「そうか」
助けてくれた男性の顔立ちを改めて見ると、私はハッと息を呑んだ。
涼しげな切れ長の目、スッと伸びた鼻筋、厚い唇、意志の強そうな凛々しい眉が、面長の輪郭に完璧に配置されている。
……どこからどう見ても美しい。
少年というには成熟しすぎているが、青年というにはまだ遠い。
私を庇う男らしさとは対照的な、幼さを残した表情が危うくて見入ってしまう。
(どうしたのかしら……私ってば。落っこちそうになって驚いたせい?)
さらさらの黒髪の奥から覗く鋭い視線が妙に色っぽくて、ドキリと胸が高鳴る。
これが俗に言う吊り橋効果というやつか?
「立てるか」
問いかけられて、無言で頷いて立ち上がってみせる。
脱げた草履を探すように視線を巡らせれば、石段の最上段に残されていたのを先に見つけたのは彼の方だった。
「座っていろ」
申し訳ないなと思いつつ、気遣いを無駄にしないためにも腰を下ろす。男性は石段を上ると、草履を持ってきて私の前にひざまずいた。
履かせてくれようとしてくれているのだと気が付いたのは、ほっそりとした指が足首を撫でたからだ。