もう一度君の笑顔を
その日の友紀は、泥酔とは行かないまでも立派なよっぱらいだった。


いつもより赤い顔して、潤んだ瞳で、何かふにゃふにゃしていた。


「楽しいねえ〜」


クスクス笑いながら見つめて来る友紀にドキドキしたて酒を煽りそうになったが、ここで俺まで酔ってしまったら、手を出さないという約束を守れる自信がなかった。


「ほら、そろそろ帰るぞ。送るから。」


そう言って荷物をまとめると


「了解しました!」


と言って敬礼された。


いつもとは違う友紀に何だか落ち着かない。


それを打ち消す様に店から出たが、肝心の友紀の足元はおぼつかない。


「しょうがないな」


そう言って友紀の腕を掴むと、かすかに甘い匂いがした。



その匂いに理性が揺らぐ。



それを押しとどめてタクシーに乗った。



普段は店の前で別れるから初めて一緒に乗ったタクシーは思いのほか狭く、友紀との距離を近く感じた。



俺は友紀をマンションの部屋まで送り届け、最寄りの駅まで頭を冷やしながら歩いた。



それでも、フワフワと笑う友紀の顔と、あの甘い匂いは記憶からは消すことはできなかった。





次の日の朝、目覚めると友紀から謝罪のメールが入っていた。


そのメールに思わず笑みが溢れた。




次の月曜の朝。


出勤した俺は、会社のエントランスで友紀を見つけた。



同僚と話しながら颯爽と歩く彼女を目で追っていると、彼女が俺に気づいた。


俺を見つけて、ちょっと恥ずかしそうに手を振った。


それに軽く応じる。


前に向き直り去って行く彼女を目で追いながら、この時、俺は友紀への思いをはっきりと自覚した。
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