もう一度君の笑顔を
その週末、脱け殻のように過ごした俺は、月曜になっても上の空だった。


何とか仕事に集中しようと、パソコンと向き合っていると、声をかけられた。



「中野さん、今日、飲みに行きませんか?」


そう言われて、断ろうとしたが、先週の光景を思い出す。


何となく、今日は友紀とは会いたくない。


会ってどうすれば良いのか分からなかった。


「いいよ。」


一人で家に居てもモヤモヤするだけだと分かっていた俺は、みんなで飲んだ方が気がまぎれる気がして、軽い気持ちでOKした。



仕事が終わって、待ち合わせの店まで行くと、待っていたのは誘ってくれた子ひとりだった。


「え?ひとり?」


驚いて尋ねる俺に、彼女は笑って答えた。


「え?言ってませんでしたか?」


「ごめん。何人か居ると思ったから・・・」



そう言って、やっぱり帰ろうと思い、その事を告げようとすると


「まさか、帰るとかいいませんよね?

 いいじゃないですか、ちょっと飲むくらい。私、中野さんに仕事の事で相談があるんです。」



そう言われた。


俺だって同じ部署の人間にそう言われて、帰れない。


俺はしぶしぶ席に着いた。


彼女の相談とは、はっきり言って大したことではなかった。


多分、俺を誘う口実だったんだろう。



同僚とはいえ、女の子と二人っきりというのは気が引けたが、罪悪感とともに、先週の光景が何度も思い浮かぶ。



友紀だって、他の男と飲んでたじゃないか・・・


言い訳の様に何度も何度もそう言い聞かせた。



正直、彼女の話など全く耳に入って来なかったが、


「何か、酔っぱらっちゃいまいた」


そう言う、甘ったるい声で我に帰った。


まずい展開だと理解した俺は、早急に彼女連れて店を出て、タクシーに押し込めた。


「え?ちょっと中野さん?」


彼女が何かを言いかけたが


「じゃあ、また明日。おやすみ。」


そう言って一方的に別れを言ってタクシーの扉を閉めた。
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