もう一度君の笑顔を
「いや、遠慮しておくよ。」



そう言って立ち去ろうとすると、後ろから


「彼女が居る時は他の女からの誘いに乗って、別れた途端、誰からの誘いも断るってどういうつもり?」


刺々しい声に振り返れば、さっきの笑顔とは違い、睨みつけられていた。


「そんなに友紀と別れたかった?」


「なっ?!」


そんなことを言われるとは思ってなかった俺は、咄嗟に返答出来ずにいる。


すると林梨花は、またにっこりと笑い言った。


「お話があるんです。付き合ってくれますよね?」



彼女の意図は分からなかったが、何となく応じた方が良いと感じた俺はおとなしく林梨花の誘いに乗る事にした。



俺が店に連れて行くと、怪訝な顔で俺を見つめる林梨花。



それもそうだろう。


ここはいつも使うフレンチの店だ。


高級感漂う店に入ると、林梨花は怪訝な顔のままついて来た。



席について、料理を注文するまで俺たちに会話はなかった。



お互いに相手の出方をうかがっているようだった。


先に口を開いたのは林梨花の方だった。



「恋人でもない女をこんな店に連れて来る男の心理って何?」


そう尋ねられ、俺は、いつもの基準で話をした。


「対面に座るから、寄りかかられることもない。高級店なら酔うフリをされることもない。コースなら、帰るタイミングに気を使う必要もない。それだけだ。」


林梨花は俺の返答に少し驚いた顔をして、その後小さなため息を付き、あきれた様に尋ねて来た。


「触られるのも、解放するのも、一緒にいるのも嫌な相手と高いお金払ってまで食事する目的って何よ?」


そう尋ねられて、あぁ、これは今の事だけを聞かれているのではない。今までのことを聞かれているのだ。そう思った。
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