もう一度君の笑顔を
頭に何も入って来ない。


今、目の前の男は何て言った?



高城が車に跳ねられた?高城って誰だ・・・・



友紀と同じ名字だけど・・・友紀なわけがない。


「・・かのさん!なかのさん!!中野光輝!!!しっかりしなさい!!!」



林梨花の声に我に返る。


「高城の親族に連絡がつかないらしいんだ。」



「友紀に両親はいないわ。連絡するならおじさんだと思う。」



「とりあえず、お前が病院に行ってやれ!

 仕事の事はこっちで何とかするから・・・」



「わかった。」



目の前のやり取りが頭に入って来ない。


「中野さん!」



林梨花が俺の腕を掴む。


「しっかりして。病院には私が行くから。

 あなたは、仕事に戻って。」


俺も行くと言いたかった。


「あなたは行かない方がいい。」


林梨花が俺にしか聞こえない声でささやいた。


意味が理解できない・・・


呆然と見つめると林梨花は泣きそうな顔で首を横に振った。


確かに、俺が行って何になる?


上手く働かない頭の代わりに直感が、林梨花に従えという。


「わかった。」


俺は、それだけ言って仕事に戻った。







友紀が事故に合ったという話は瞬く間に社内に広まった。



どうやら、友紀が信号を待っている所に車が突っ込んで来たらしい。


意識不明のまま病院に運ばれたとの事だった。


入って来る情報のすべてが俺を不安にさせる。



手の震えが止まらない。



どうして、林梨花は俺に仕事に戻れと言った?


どうして、俺は素直に仕事に戻った?



とても仕事ができる状態じゃない俺は、少し前の自分の判断を呪った。




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