恋宿~イケメン支配人に恋して~
「……八木さんって、普段からこう面倒見のいいタイプなんですか?」
「んー、まぁねぇ。さっきも言った通り下に妹弟がいるからついつい、やってあげたくなっちゃうっていうか放っておけないっていうか」
あはは、と笑いながら服を脱ぎ終えると、ふたりで浴室へと入って行く。
「けどおかげで誰といてもお母さん的な立場になっちゃってさ。そのせいで彼氏とも上手くいかないことも多くて」
「彼氏?」
そういえばまえに千冬さんが『八木には他に相手がいる』って言ってたっけ。
思い出しながら、八木さんとふたり湯船にちゃぷんと浸かると、熱いお湯に体が一気にほぐれる感覚が心地いい。
「彼氏って、同じ歳なんですか?」
「ううん。ふたつ年下でね、幼馴染なの」
「へぇ……この辺の人なんですか?」
「この辺の人っていうか……」
少しうーんと考え、八木さんは「まぁいっか」と何かに納得したように笑う。
「千冬さんくらいしか知らないんだけど……私の彼氏ね、あの旅館の厨房で働いてるの」
「へ?厨房?」
いつも厨房にいる人。となると思い浮かぶのは板前のおじいちゃんと、島崎さん、もうひとりいる若い男の子。
おじいちゃん、はないだろうから……。
「ってことは……島崎さん?」
「違う違う!もうひとり、調理補助の男の子いるじゃない?彼なの」
「あー……」
言われて思い出すものの、男の子は島崎さんたちと真逆の無口な人だから、特別会話をした記憶もない。
あの男の子と八木さんが……っていうのも少し意外な組み合わせな気もするけど、おとなしい彼に面倒見のいいお姉さんの八木さんは、確かにちょうどいい組み合わせにも思えてくる。
相手が館内の人なのに公言していないのは、きっと他の皆にからかわれてしまうからだろう。