恋宿~イケメン支配人に恋して~
やってきた石段街で、八木さんは慣れたようにスタスタと歩き出す。
「それで、どこに行くんですか?」
「女ふたりでじーっくり話が出来るところ」
「へ?」
じっくり話が……?
どこか検討もつかずに首を傾げると、八木さんは石段の途中にある抜け道をくだり突然足をとめて、目の前を指差す。
すると、そこにあったのは『石段ノ湯』と看板に書かれた小さな温泉施設らしき建物。
「温泉……ですか?」
「そう。日帰り温泉でね、理子ちゃんうちの旅館以外の温泉って全然入ってないでしょ?ここまで来てもったいない!」
言われてみればたしかに……と納得する私に、八木さんはにこにこと笑って中へ入る。
「私ここの温泉が一番好きでさ、よく入りに来るの。だから理子ちゃんもぜひ連れてきたくて」
建物の中へと入れば、そこには受付があり、男湯と女湯、奥には座敷の休憩室……と至って普通の小さな温泉の光景。
「いらっしゃい」
「こんにちは、大人ふたりで。あ、回数券で払います」
「はい、ごゆっくりどうぞ」
回数券まで持っている……ってことはよっぽどの常連なんだろう。渡されたタオルを手にすると、ふたりで女湯ののれんをくぐった。
「あ、八木さん。お金払います」
「いいのいいの、私が連れてきたくてきたんだし!」
「けど、」
「さ、早く入ろ!」
出しかけた財布をしまわせると、八木さんは早速服を脱ぎ始めた。
脱いだ服から見えるのは、私より10センチほど背が高い彼女のほっそりとした体。私も細めではあるけれど、八木さんのほうがさらに細い気がする。
おまけについ目を向けてしまった先には、私より少しある胸元。
……背が高くて体は細くて胸があるなんて……!!
ここ数日のなかで一番の衝撃かもしれない。
「ん?どうかした?」
「い、いえなんでも……」
同じように服を脱ぎながら、思わず自分の体をそっと隠した。