泡沫 〜白虎編〜
亜理亜は、あの信幸という男が苦手だと感じていた。

クラスに一人は必ずいるムードメーカーな存在であり、基本は男子と行動するが、女子からの人気も高いため、常に周りは賑やか。

その上、何かと自分に話しかけてくる。

亜理亜からすると迷惑極まりない男であった。

極力関わらないようにしよう。

そう考えながら歩いていた時だった。

どこからか鈴の音が聞こえた。

亜理亜が、ふと歩みを止め、その音の方へと顔を向けるが、そこには何もなく、草木が生い茂っているだけであった。

気のせいかと思い、再び歩き出すと、またも鈴の音が聞こえてきた。

亜理亜は行っては行けないと本能で感じた。

だが、どこか懐かしいその音に心を奪われたのか、ふらふらとその音に導かれ歩き出し、草木を掻き分け、道ではない道を歩いて行った。

すると、その先には小さな祠があった。

もう、誰の記憶にも残っていないような、寂れた古い祠だった。

周りに置かれている石の置物には苔が纏わり付き、祠自体も蜘蛛の巣が張っていたり、所々壊れていて、扉の建て付けも悪い。

長い間放って置かれているのが一目で分かる有様であった。

亜理亜が中を覗き込むと、奥には虎の置物があった。

四神白虎。

この祠は白虎を祀っていた祠なのだと理解すると、突然背後に気配を感じた。
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