ミントグリーン~糖度0の初恋~
「俺だって迷惑してんだよ。
職場に妹がいるって居心地最悪だぞ?
でも、ナベさんはあいつが希望してる教科の担当だし?
確かに教師としていい見本になる人だと思うし?
反対も出来ないだろ」
清海の言うことは尤もだと思う。
でも、すんなり納得なんて出来ない。
「だからって、いつも一緒に行動するとかしなくてもいいじゃんか。
補助員ってナベ先輩専任じゃないんだろ?
何なんだよ、ベッタリ一緒に……って」
「そんなに嫉妬に狂うならとっとと自分で捕まえたら?」
カウンターに両肘ついて頬杖した清海が正面を見たまま呆れたように言う。
「千波が自分にゾッコンだからって気を抜いてると足下掬われるぞ?
千波はお前が知らないだけでモテるからね?俺の妹だけあって。
高校の同級生男子とは性別飛び越えて親友になったってさ。
そんなことがあるのか俺は怪しいと思ってるけど」
俺の記憶に高校の卒業式で告白されたと言っていた千波が甦る。
あの時の俺は何で冷静に聞いていられたんだろ?
今はそわそわして、イライラして、とてもじゃないけど冷静でなんていられない。
「清海……」
「なーに?」
「お願いだから千波にたかる虫は追っ払っといて。
俺、なるべく早く答え出すから」
躊躇いつつも初めてはっきり意思表示した俺に目を向けた清海は、じっと俺を見つめてから視線を前に戻して言った。
「ふーん。
別にいいけど、お前自身が悪い虫だったりしたら俺は容赦しないからね?」