モラトリアム
タクシーが捕まる通りまで並んで歩く。さりげなく通り側を歩いて、歩調も私にあわ合わせてくれてる。
それに気づいたのは最近だった。シレっとしてるくせに、ちょっとした所に優しさや男らしさが垣間見える。
西園とつき合う女の子は案外幸せ者かもしれない。酔った頭でそんな事を考えていた。
とその時、左手に温もりを感じる。見れば西園の右手と繋がっていた。
んふふ、と笑う彼。この手をなぜか離したくなくてそのままにした私。
この気持ちが恋心かもとよぎった考えを頭の隅に追いやった。
今はまだ気づかなくてもいい。
いや、気づきたくない。
このふわふわした関係を続けていたいから。
END
