リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【後編】
「僕がテルテルボウズを吊るすと、必ず、雨が降ります。これは小学校のときからのテッパンです。明日の見合いを阻止するために、明日はガンガン雨を降らせます。テニスもバーベーキューもやらせません」
一息にそう言うと、どうだと言わんばかりに胸を張る木村に、明子は頭を抱えるしかなかった。
「そうかそうか。判った判った。そういうことなら、好きなだけ吊るしとけ」
小林は苦笑を浮べつつ木村にそう言い、村田は「明日、晴れてほしいんだけどなあ」とぼやいていた。
周囲の者たちも、やや脱力感のある乾いた笑いをこぼしている。
「木村せんぱーい。いいですかー」
渡辺がややふざけた口調で、自慢げな様子の木村を呼びかけた。
「なに」
「テルテルボウズって、基本、明日は天気がよくないらしいって言う状況だから吊るすんじゃなんのかなと」
「だね」
「そりゃ、雨降る確率が高いってことだろうが。なにが伝説だよ」
バカじゃないのか、お前と呆れたように言い放つ渡辺を「渡辺くん、えらい、かしこい」と明子はほめそやした。
そんな明子と渡辺に面白くなさそうに頬を膨らませた木村は、「なんとでも言え」と開き直った。
「なにがなんでも、お見合いだけは阻止するんだ」
「あのね、木村くん。だから、明日のはお見合いじゃないから」
「それでも、念のためです。明日は雨です」
「私のかわいい姪っ子と甥っ子が泣くけど?」
「子どもを盾にするとは卑怯なっ でも、負けません」
絶対にテルテルボウズは取りません、雨を降らせますと腰に手を当てて宣言する木村に、明子は疲れたようにがくりと項垂れた。
そのとき、始業を告げるチャイムが鳴り響いた。
「ほれ。バカ話はそこまでだ。仕事、仕事」
今日は残業なしの定時上がりが目標だからな。
小林が緩んだ空気を引き締めるように手をパンと打ち鳴らす。
皆が気持ちを切り替えて、仕事への集中を高めていった。
明子は背後を振り返る。
野木は、君島に代わり今日はタイヤ屋に出向いている。
幸恵の姿はない。
明子の視線に気付いた沼田は、小さく首を横に振って見せた。
沼田のその仕草は、幸恵が出てきていないということを告げているのだろうと、明子はそう理解した。
美咲たちの姿もない。
主のいない席を見つめながら、いっそのこと、このまま辞めてくれないかなあと、そんなことを考えている自分に気づいた明子は、そんな自分に対して嫌悪混じりのため息を吐き仕事に取りかかった。
一息にそう言うと、どうだと言わんばかりに胸を張る木村に、明子は頭を抱えるしかなかった。
「そうかそうか。判った判った。そういうことなら、好きなだけ吊るしとけ」
小林は苦笑を浮べつつ木村にそう言い、村田は「明日、晴れてほしいんだけどなあ」とぼやいていた。
周囲の者たちも、やや脱力感のある乾いた笑いをこぼしている。
「木村せんぱーい。いいですかー」
渡辺がややふざけた口調で、自慢げな様子の木村を呼びかけた。
「なに」
「テルテルボウズって、基本、明日は天気がよくないらしいって言う状況だから吊るすんじゃなんのかなと」
「だね」
「そりゃ、雨降る確率が高いってことだろうが。なにが伝説だよ」
バカじゃないのか、お前と呆れたように言い放つ渡辺を「渡辺くん、えらい、かしこい」と明子はほめそやした。
そんな明子と渡辺に面白くなさそうに頬を膨らませた木村は、「なんとでも言え」と開き直った。
「なにがなんでも、お見合いだけは阻止するんだ」
「あのね、木村くん。だから、明日のはお見合いじゃないから」
「それでも、念のためです。明日は雨です」
「私のかわいい姪っ子と甥っ子が泣くけど?」
「子どもを盾にするとは卑怯なっ でも、負けません」
絶対にテルテルボウズは取りません、雨を降らせますと腰に手を当てて宣言する木村に、明子は疲れたようにがくりと項垂れた。
そのとき、始業を告げるチャイムが鳴り響いた。
「ほれ。バカ話はそこまでだ。仕事、仕事」
今日は残業なしの定時上がりが目標だからな。
小林が緩んだ空気を引き締めるように手をパンと打ち鳴らす。
皆が気持ちを切り替えて、仕事への集中を高めていった。
明子は背後を振り返る。
野木は、君島に代わり今日はタイヤ屋に出向いている。
幸恵の姿はない。
明子の視線に気付いた沼田は、小さく首を横に振って見せた。
沼田のその仕草は、幸恵が出てきていないということを告げているのだろうと、明子はそう理解した。
美咲たちの姿もない。
主のいない席を見つめながら、いっそのこと、このまま辞めてくれないかなあと、そんなことを考えている自分に気づいた明子は、そんな自分に対して嫌悪混じりのため息を吐き仕事に取りかかった。
